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未来のDX人財と共に学ぶ。会津大学と2Weeksインターンシップを開催しました

こんにちは、TOPPANデジタル ICT開発センター所属の椿と申します。
当記事は、2024年9月に実施した会津大学×TOPPANデジタルのインターンシップの実施内容をまとめました。

実施してみて、参加してくれた学生の皆さんの感想や講師側の学びについては、別の記事で公開していますのでこちらもご覧ください。


会津大学とTOPPANグループのカンケイ

会津若松市、会津大学、一般社団法人 AiCTコンソーシアム(※1)は、2022年4月に三者間の基本協定を締結し、地域社会のためのスマートシティの社会実装に向けた段階的なアプローチとして、AiCT連携プログラム:会津大学生AiCT実践プログラム(ASAP)が展開されています。その活動の一環として、会津大学とTOPPANデジタルでのインターンシップが実現しました。

撮影日が最強寒波と重なったにもかかわらず、素敵なツーショットをいただきました
【右】会津大学 企画推進本部 川口 立喜 上級准教授
【左】TOPPANデジタル スマートシティデザインセンター会津 部長 佐藤 伸一

スマートシティAiCTでのTOPPANグループの取り組み

TOPPANグループは、会津若松市にあるスマートシティAiCTに拠点を置き、ICT・IoTや環境技術などを活用した、地方創生・地域活性化を推進する活動を行っています。

▮ スマートシティAiCTについて
「スマートシティ会津若松」の取組みの一環として、
首都圏などのICT関連企業が機能移転できる受け皿として整備された
オフィス環境(及び、オフィス周辺エリアの総称)です。
ICT関連企業の集積により、首都圏からの新たな人の流れを生み出し、
新たな雇用の機会が創出されることで、
若年層の地元定着や地域活力の維持発展を目指しています。

SmartCity AiCT サイトより

この産官学連携は、大手・ベンチャー問わず、想いを持つ約90社以上もの企業が集結し課題に取り組んでいます。今回のインターンシップは正に「教育」のワーキンググループの一環となっています。
またTOPPANグループは、教育の他に「食・農業」をテーマとした「地域内流通DXとフードロス削減による農業再活性化プロジェクト」の責任事業者も務めています。

図1.スマートシティによる地域イノベーションのグループ

詳しくは、過去のnote記事をご覧ください。

会津大学について

会津大学は、コンピュータ理工学分野における最先端の教育・研究を推進し、世界各国からトップレベルの教員を集め、国際的な教育・研究の拠点として「地域から世界へ、世界から地域へ」の実現を目指しています。卒業生は、先進的なICT技術を活用し、地域および国際的なICT人材として活躍しており、地域や大学にとって貴重な財産となっています。
特に、このAiCT連携プログラム(会津大学生AiCT実践プログラム:ASAP)は、地域の課題解決と魅力の向上に取り組み、持続可能な地域社会の実現や地域産業の発展に向けた産学官連携を推進しています。

AiCT連携プログラム:TOPPANデジタルでのインターンシップに期待するもの

AiCT連携プログラムは、学生と企業の相互理解を深めるために、AiCTオフィスツアーやインターンシップ、アルバイトなどを通じて段階的に理解を深める機会を提供しています。このプログラムは、専門分野におけるマッチングだけでなく、地域社会や課題解決にICT技術を活用する実践的な取り組みも可能にしています。
このプログラムを通じて、学生は以下のような経験を得ることができます。

  1. 専門分野の知識を実務に応用する実践的な経験

  2. 自己理解と将来のキャリアプランの明確化

  3. 地元企業との連携を通じて地域理解の促進と定着

これらの経験により、学生の学習意欲が高まり、就職活動や卒業後の社会人生活への円滑な移行が期待されています。また、産学官連携の強化や教育プログラムの改善にもつながると考えられています。
このプログラムの企画運営に携わっている会津大学 企画推進本部の川口 立喜上級准教授に、今回のTOPPANデジタルでのインターンシップを通じて、また学生の課外活動についての期待をお伺いしたところ、次のように語っていただきました。

「会津大学のコンピュータ理工学に特化した学生には、企業の多様な業種の方々との協働や実践を通じて、地域社会とのつながりを深めていってほしいと考えています。このAiCT連携プログラムは、学生と企業との相互理解を深めるだけでなく、学生にキャリアの選択肢を広げ、企業にとっても優秀な人材を発掘する貴重な機会となると思います。さらに、最先端のICT技術や専門職の企業の方々と触れ合うことで、学生は刺激を受け、協働でプロジェクトを進める中で、成功だけでなく失敗からも学びながら成長することが期待されます。」

会津大学 企画推進本部 川口 立喜 上級准教授

2Weeksのインターンシップ実施内容

今回のインターンシップ、実は私たちTOPPANデジタルにとって新しい試みが2つありました(以下参照)。

  1. 特定の大学のみを対象とし、インターンシップの募集を行ったこと。

  2. 採用担当や人事担当などの部署が主幹を担うのではなく、開発現場が主導で計画し、インターンシップを指揮したということ。

前述した「会津大学について」にある通り、以下3つのポイントから、会津大学とのコラボレーションの実施に踏み切りました。
▮ 世界各地から集まるトップレベルの教員と、そこで学ぶ学生さん方
▮ 産官学連携を強みとしている点
▮ 「スマートシティ会津若松」で協業しているご縁

また、本インターンシップでは、開発現場が主導で実施できるということで、いろんな職種メンバーが在籍する利点を活かして、開発プロセスを全て体験してもらうプログラムを用意しました。
ここから先は、各プロセスごとの内容をご紹介します。

図1.2Weeksインターンシップの全体スケジュール

1.チーム開発に触れる
(講師:フルスタックエンジニア【鈴木・三坂】)

このワークでは、主に「AWS/GitHubの基礎」「アジャイルでチーム開発を行う」の2つをテーマにしました。

講義ではAWSやGitHubについて理解を深めていただき、GitHub Codespacesを使った 「社内図書の貸出システム」のアジャイル開発を体験してもらいました。用意した課題は二つ。

  • フロントエンドの開発
    一覧画面に蔵書場所を新たに表示する。表形式の一覧データに位置情報を示すピンのアイコンとAPIで取得した「拠点名」を表示させる。コードの改修後は、AWS CloudFrontとS3を使用してフロントエンドのデプロイ実施し、一通りのリリース作業を体験。

  • バックエンドの開発
    API設計書をもとに本の情報を更新するためのPUTメソッドのAPIを開発。コードの改修後は、GitHubActionsでAWS Lambdaへの自動デプロイを実施し、講義中にはブランチのマージによって発生したコンフリクトへの対応も体験してもらいました。

図2.フロントエンド開発で実装した画面

2.マーケティング基礎・FigmaによるUI/UXデザイン
(講師:セールスイネーブルメント【大矢】・デザイナー/PdM【松村】)

今回のワークで、マーケティングの基本から新規事業の立ち上げに欠かせない実践的なノウハウまで、広いテーマでの講義を行いました。 学生たちにリーンキャンバスを使って事業アイデアを実際に形にしてもらい、単年黒字化がいかに難しいかを知ってもらうと同時に、リアルなビジネスの課題にも触れてもらいました。
また、「顧客の声をどう引き出すか?」「どうすればターゲットの本音をつかめるか?」といったポイントも体験を通して考えてもらいました。 このワークを通じて、サービスの作り手が主語でなく、お客様を主語にしてニーズを理解することの大切さについて気づいてもらう機会を提供できたと考えています。

図3.実際にワークを行ったリーンキャンパス

マーケティング講義に続けて、UI/UXの基本や、フィットジャーニーを使って顧客がサービスに出会ってからの流れを整理し、各段階でのコミュニケーションの工夫も一緒に体験しました。
自分のアイデアをリーンキャンバスに落とし込む中で、計画だけではわからない「隠れた落とし穴」や「実現可能性のチェックポイント」にも気づき、現実的な視点を養う良い訓練になったようです。
学生からは、ビジネスと技術の橋渡しの面白さや、マーケティングの知識が将来のキャリアにどう役立つかなどの感想があり、マーケティングの奥深さを伝える講義となりました。

図4.FigmaでUI/UXを作り込む前段階の各画面のスケッチ

3.要件定義から設計書に落とし込む
(講師:ソリューションエンジニア【増茂・酒井】)

講師が疑似顧客となり、まずは30分間のミーティングで事前に用意した課題のヒアリング・要件の確認を行い、課題に対する解決案として画面設計書を用いて機能提案を実施しました。

インターン生同士で画面設計書の交換を行ったときは、確認した要件の漏れや記述ミス、表現の粒度などの確認ができ、顧客の要望を正確にキャッチアップすること、メンバー同士で認識齟齬がなく、わかりやすい資料を作成することの難しさを体感してもらいました。

また、よりリアルな現場に近い開発プロセスを知れる良い機会だったという感想を頂きました。私たち講師組は、学生さん皆さん、こだわりポイントが異なり、新しい視点が入った設計に仕上がっていて楽しませていただきました。

画像5.それぞれの設計書に対して意見交換をする様子

4.AWSを活用したプログラム開発
(講師:SRE/クラウドエンジニア【加納】)

本ワークでは、FigmaによるUI/UXデザインで作成した画面設計や機能を、実際のプログラムに落とし込み、それをAWSにデプロイする内容に取り組んでもらいました。
各学生ともに、JavaやC++を活用したプログラミングについての知識はあるものの、Web系の知識についてはあまり大学で扱わないとのことだったため、まずはバックエンド・フロントエンド・AWSの基礎的な内容を学ぶところからのスタートでした。

▮ スケジュール

図6.全体スケジュールのうちのプロトタイプ開発

9/13(金) FastAPIを用いたWebアプリ入門
9/17(火) Amazon Bedrock(生成AI)を含めた、AWSの基礎学習
9/18(水) FastAPIとAmazon Bedrockを組み合わせた生成AIアプリ開発
9/19(木) 同内容

基礎勉強を除いてWebアプリ開発に充てられた時間は2日間だったため、かなりスケジュール的にタイトな開発になりました。

▮ 作成したWebアプリ画面

作成したアプリ画面1.「複数の取得情報の組み合わせからアドバイスを生成」

ホーム画面の「天気情報」と「ロケーション情報」、そして「服装の画像データをBedrockでimage2textした情報」から、服装が天気とロケーションに適しているかどうかのアドバイスを生成しました。

実際に動かす様子は、こちらからご覧ください👇

基礎学習からのスタートとなったプログラム開発ですが、タイトなスケジュールだったにも関わらず、当初実装予定だった機能を実装し切ることができ、学生の優秀さが際立つ結果となりました。

5.成果報告

学生の皆さんには、マーケティング基礎で市場調査を体験し、そのままAWSを活用した『服装コーディネート(アドバイス)アプリ』を実装してもらいました。天気・場所に応じて、服装が適しているかを生成AIがアドバイスしてくれる機能搭載です。

作成したアプリ画面2.生成AIによるアドバイス画面とチャット画面

アドバイス情報を見ると「天気」・「ロケーション」・「服装」から、それらしいアドバイスが生成されていることが見て取れます。
また、もらったアドバイスについて深堀りできるように、アドバイスの下にチャット機能も追加し、ユーザーが利用しやすいような工夫がなされていました。
機能の実装だけでなく、ユーザーの利用フローに配慮した画面構成・機能を実装していた点が印象的でした。

最後に

おまけの講義(DevRel/技術広報【椿】)

本記事の執筆をしている私自身も、企業・エンジニアのDevRel活動の有用性についてお伝えする機会をいただきました。

DevRel(デブレル)は「Developer Relations」の略語で、簡単に言えば「自社や自社製品と外部の開発者との良好な関係性」を形成するためのマーケティング活動です。

https://thinkit.co.jp/article/19462

昨今では、海外から上陸した上記の内容に付随して、「組織(個人)力」「Product/業務」「採用」と幅広く企業を支えるエンジニアの重要な活動として、多くの企業が取り入れているテーマとなっています。

学生の皆さんとディスカッションする中で、会津大学ではたくさんの技術サークルや、大会などへの参加にとても熱心であることが見え、たいへん学びになりました。私たち企業の方が少し焦りを覚えるほどです。もしかしたら、意識をするものでもなくこういった活動がスタンダードになっていくのかもしれません…と思った若者とのふれあいでした…(遠い目)。
こういった、技術や社会進出へ意欲的な方がたくさんいらっしゃると思うと、とても頼もしい限りですし、我々技術広報ももっと頑張らねばと励みになります💪

画像7.自身の経験で「これってDevRel活動だったのか」をディスカッションする学生3名

実施してみての振り返り

今回、大学とのコラボレーションかつ、現場が指揮権を持つ2Weeksインターンシップは初の試みでした。就業型という形ではありませんでしたが、期間中にいろんなテーマを扱ったことは、学生の皆さんからたいへん高い満足度をいただきました。
また、学生の皆さんができるだけ「分かりやすく」、そして教える側が「教えやすい」ように色々と教材を工夫するなど、教える側としても学びの多いインターンだったと感じています。

今回インターンシップに参加してくださった皆さんが、就職活動でTOPPANを選んでくれたらとっても嬉しいですが、それ以上に、各テーマに精通したTOPPAN社員と触れることで、ご自身の将来像をより解像度高く描ける結果となっていましたら幸いです。

大学コラボ以外のインターンシップ情報はこちらからご確認いただけます。https://www.toppan.com/ja/recruit/internship/

画像8.スマートシティAiCTの外観

(※1)一般社団法人AiCTコンソーシアムについて
AiCT コンソーシアムは、オプトインによるデータ活用とパーソナライズによる市民中心のスマートシティ実現に向け、国内 外の有力企業、会津地域の企業や団体など、90以上の会員企業・団体で構成されているコンソーシアムです。2011年 に会津若松市・会津大学・アクセンチュアの産学官連携で始まった、東日本大震災からの復興に向けた取り組みを端緒と して、先進的なスマートシティの取り組みが進み、多数の企業が会津若松市に集積したことを受けて、2021年に設立され ました。会員企業・団体は、スマートシティのデータ連携基盤となる都市OSを軸に、ヘルスケア、防災、データ利活用、も のづくり、エネルギー、教育、食・農、観光、行政、決済、モビリティインフラ、サーキュラーエコノミー、API、コミュニケーシ ョン領域など、幅広い分野のスマートシティサービスを、組織の枠を超えて開発、運用しています。本コンソーシアムでは、 会津地域で10年以上をかけて培われた知見、プラットフォーム、ネットワークをもとに、会津における地域DX(デジタル 変革)を目指すとともに、日本のあるべきスマートシティのモデルとして全国に発信しています。会員企業の詳細は、AiCT コンソーシアムのWebサイトをご覧ください。(https://www.aict.or.jp/company-list

一般社団法人AiCTコンソーシアムより