マガジンのカバー画像

デジタルテクノロジー・レポート

31
TOPPANデジタルの技術戦略センターでは、変化する私たちの生活に寄与するデジタル技術を予見・整理しています。ここではその技術について作成したレポートを公開しています。
運営しているクリエイター

記事一覧

私の情報だから私が管理する~デジタルアイデンティティウォレットについて~(後編)

この記事は「私の情報だから私が管理する~デジタルアイデンティティウォレットについて~(前編)」の続きになります。前編をまだ読んでいない方は、前編を先にご覧いただけると「DIW」の理解がより深まると思います。  “ウォレット”の種類とDIWとの比較 ”ウォレット”と名称がつくアプリケーションは既に多数展開されています。本稿のテーマである「DIW」を含む3つのウォレットについて以下の表のように整理します。 ● DIW  DIWは氏名、年齢、所属している組織など、個人の”個人

【TOPPAN GENERATIVE TRIAL#2】第1回ワークショップ開催レポート

※本記事で紹介するワークショップは、2024年8月8日に終了しております。 こんにちは。生成AIを研究しているAIエンジニアの、TOPPANデジタル波多野です。 TOPPANデジタルでは、生成AIに関する様々な取り組みを行っております。その中でも新たな試みとして立ち上げたのが、CHAOSRU INC. と共同で展開する実験プロジェクト『TOPPAN GENERATIVE TRIAL』です。プロジェクトの詳細については、前回の記事に譲るとして、今回は8月8日に開催された第1

教育DXにおけるLLMの活用

 昨今、AI技術の飛躍的な発展が注目されており、特に大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)の活用は様々なビジネス領域へ拡大しています。本記事では、LLMを活用した教育DXの取り組みをご紹介します。 概要  我々は、教育の未来を切り開くための新たなステップとして、 教育に関連する業務のデジタル化を推進するとともに、東京書籍との連携によるLLMを活用した教育DXに取り組んでいます。特に小・中学生の試験・ドリル問題の作成とCBT試験[※1](Com

私の情報だから私が管理する~デジタルアイデンティティウォレットについて~(前編)

デジタルアイデンティティウォレットとは デジタルアイデンティティウォレット(以下 DIW と呼称)とは、個人の「デジタルアイデンティティ」を安全に管理・提示することができるソフトウェアです。  DIWは、政府などの認証機関が発行した個人の身分証明書や資格証明書をデジタル証明書として格納することができ、ユーザーはデジタル証明書を選択し、任意の相手へ提示することができます。  デジタル証明書で証明できる内容には、デジタルIDとデジタルアイデンティティというユーザー本人の身分や

パスポート向けDOVIDについて

DOVIDとは DOVID(Diffractive Optically Variable Image Device、回折光学可変画像デバイス)は光の特性(回折現象など)を制御した視覚効果を有するセキュリティデバイスの総称です。  ホログラムもDOVIDの一種ですが、ホログラムは装飾品や玩具として利用されることも多く他の用途と区別するため、DOVIDや回折格子デバイスと表現されます。DOVIDは視覚的に簡単に認識でき、模造品(本物と類似の外観を有する贋物)を作りにくい特性が

【TOPPAN GENERATIVE TRIAL#1】WELCOME

ようこそ、「TOPPAN GENERATIVE TRIAL」へ はじめまして。「TOPPAN GENERATIVE TRIAL」は、TOPPANデジタルとCHAOSRU INC. が共同で展開する生成AIの実験プロジェクトです。TOPPANデジタルではこれまで情報技術の研究を行ってきました。今回、クリエイター・デザイナー向け生成AI研究としてCHAOSRUと連携​することとなりました。このnoteでは、生成AI技術にフォーカスし、本プロジェクトの活動内容や研究成果、未来のク

カラーマネージメント技術の活用

カラーマネージメント技術とはカラーマネージメントとは、色を扱うデバイスを制御し、正しく色を伝達する技術です。「カラーマネージメント」は直訳すると「色管理」となりますが、実世界の光情報の把握、色空間の変換、デバイスの制御等が必要な総合的な技術です。色を扱うデバイスとしては、カメラなどの実世界から色情報を取り込む入力デバイス、ディスプレイやプリンタなどの色情報を実世界に表現する出力デバイスがあります。 カラーマネージメントの何が嬉しいかを考えるために、逆にカラーマネージメント

遊びながら量子コンピュータを理解する!?「量子ゲーム」

量子ゲームとは 量子コンピュータは、量子力学の原理を利用して、通常のコンピュータでは解けない複雑な問題に取り組むことができる革新的な技術です。最近では、テレビや新聞の科学関連のニュース、小説や映画などのSF作品を通じて、量子コンピュータというワードをよく目にするようになりました。これらをきっかけに量子コンピュータに興味を持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ量子コンピュータの世界を調べてみようとするも、専門用語や量子力学の知識を要する高度な概念に圧倒され、途中で挫折

グラフニューラルネットワークとは

 グラフニューラルネットワーク(GNN:Graph Neural Network)は、ノード(点)とエッジ(線)で構成されるグラフを入力データとして、AIの学習・予測をする深層学習モデルです。実世界では、ソーシャルネットワーク、分子構造、交通ネットワークなど、多くのデータがグラフとして表現可能です。GNNは、これらグラフのノード間の関係性やパターンを学習し、ノードやグラフ全体の特徴表現から予測・分類等のタスクを実行します。具体的には、ソーシャルネットワークのユーザーグループ

全方位で世界を記録する「パノラマ技術」とTOPPAN DIGITAL SANDBOX®での実証実験

はじめに Apple社のVision ProやMeta社のMeta Questシリーズなど、VR, MR, ARなどを体験できるXRデバイスが各社から発売され、高い品質でかつ誰でも手軽に体験できるようになってきました。アプリケーションに関しても、UnityやUnrealEngineに代表されるゲームエンジンなどで誰でも開発できるようになってきています。私たちはこれらのデバイスが今後さらに普及し、誰でもどこでも体験できる未来が来ると想像しています。  DX 事業の拡大と新規

企業や個人の秘密を守るゼロ知識証明

ゼロ知識証明概要  ゼロ知識証明とは、情報ネットワークを介して「自分が知っている秘密の情報」を誰にも見せることなく、その情報が「本当であること」を証明することができるやり取りの方法です。  通常、証明のために、何らかの検証を行う場合、情報の通信相手に秘密情報(パスワードなど)を提示する必要があります。この方式においては、技術の発展や応用などにより安全性が高まりつつありますが、秘密情報自体を提示しない方式として、ゼロ知識証明を導入する技術も研究・開発されています。  ゼロ知

ブロックチェーンが実現する「価値のインターネット」と「Web3」

概要ブロックチェーンとは?  ブロックチェーンとは、デジタル情報を安全かつ透明に取引・記録するための分散型のデータベースの一種です。複数のコンピューターがネットワークを形成し、同じ情報を持ちながら、その情報の変更や追加を合意形成アルゴリズムに基づいて行います。合意された情報は、ブロックと呼ばれる単位でまとめて記録されており、各ブロックがそれぞれ前のブロックから導出されたデータを含み、鎖(チェーン)のような構造をしていることからブロックチェーンと呼ばれています。  未だ正体

コンピュテーショナルファブリケーション技術による機能性メタマテリアルの研究

 コンピューターによる設計技術と、3Dプリンターをはじめとするデジタル加工機の進化と普及は、製造プロセスの効率化だけでなく、人間とコンピューターが共同で創造する新たな製造技術、コンピュテーショナルファブリケーション(Computational Fabrication)を生み出しました。この技術は、革新的な形状や構造のデザインとその実現を可能にし、それらはメタマテリアル[※1]と呼ばれる人工新素材の開発に応用されています。その適用範囲は急速に拡大しており、当初は建築、航空宇宙

デジタル社会での信頼性を向上させるVerifiable Credentials

概要Verifiable Credentialsとは  Verifiable Credentials(以下、単数形:VC、複数形:VCs)は、あらゆる証明書をデジタル化したもので、「検証可能な資格情報」とも呼ばれます。私たちが保有するあらゆる情報をVCsに変換することで、デジタル社会において信頼性が担保された証明書として活用できます。  W3C(World Wide Web Consortium)という団体がVCsのデータモデルを公開しており、VCsの規格が標準化されてい