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【TOPPAN GENERATIVE TRIAL#4】 生成AI×エンタメの未来

第1回ワークショップ 作品発表(エンタメ起業家:佐野篤)

こんにちは。TOPPANデジタル波多野です。

TOPPANデジタルでは、生成AIに関する様々な取り組みを行っております。
その中でも新たな試みとして立ち上げたのが、CHAOSRU INC. と共同で展開する実験プロジェクト『TOPPAN GENERATIVE TRIAL』です。
これまでの記事で、プロジェクトの詳細、2024年8月8日に開催されたワークショップのレポートをお送りしました。

今回の「TOPPAN GENERATIVE TRIAL#4」では、ワークショップの詳細レポート第2弾としてエンタメ起業家の佐野篤さんによる発表を紹介します。


【発表者紹介】エンタメ起業家:佐野篤

愛のあるクリエイティブ企画制作を行う株式会社パンダビジョン代表取締役。岡山県倉敷市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社や編集プロダクションでの漫画編集・ライティング等の経験を経て、吉本興業でバラエティ番組やYouTubeなどお笑いコンテンツのプロデュースや広報PR部門等を歴任後、起業。

【発表内容】生成AI×エンタメについて

佐野さんは、過去に芸能事務所でプロデューサーとして活躍した知見を活かして、現在は新しいメディアの可能性を探る取り組みを行っています。AIと従来のプロデュース経験をハイブリッドに活用した新たなエンターテインメント事業について、佐野さんは、自身の試行錯誤を紹介されました。

芸能エンタメの課題とAIを使った新しい解決アプローチ

AIバーチャルヒューマンの強みは、手間をかけずに大量のコンテンツを制作し、短期間でプロダクトサイクルを作ることができる点。佐野さんは、人間の手作業では作ることができない膨大なパターンを試作しながら、その中から伸びるコンテンツを見つけ出すことを戦略の一つとしています。

また、佐野さんはAIシンガーという新しいジャンルにおいて、特にヒップホップのラップに可能性を感じていると語ります。その理由は、ラップはリズムや韻を駆使した表現であり、自分の感受性を言葉にして音楽に載せるという特性を持つため、翻訳しやすく、言語の壁を越えてその躍動感が伝わりやすいからだそうです。こうした特徴により、ラップは国境を超えた広がりを持つポテンシャルが高いと言えます。

アニメ調からの脱却と国際展開への意欲

バーチャルヒューマンを活用するうえでの課題として、佐野さんは「アニメ調からの脱却」を掲げています。日本のバーチャルヒューマン市場はアニメ風のデザインが主流のため、国内向けコンテンツに留まりがちだと佐野さんは考えます。この枠を超え、よりグローバルに通用するリアルな表現を目指しているといいます。

今後の展望

佐野さんの目標は、AIを駆使してグローバルに通用するバーチャルヒューマンを生み出し、新しいエンターテインメントの形を提示すること。この分野はIPを一から育て上げる必要があり、従来のコンテンツ制作とは異なるアプローチが求められます。

また、バーチャルヒューマンやAIシンガーという分野がまだ新しいため、視聴者にとっては受け入れるための文化が整っていない側面もあるかもしれません。佐野さんは、そのような難しさを理解しつつも、AIを活用したプロダクトが世の中でどのように評価されるのか、どのようなブレイクスルーが必要なのかを日々模索しています。

佐野さんが試作されているチャンネル「東京AI少女」

いかがでしたでしょうか。ここまで佐野さんの発表を紹介しました。

発表に対する筆者(TOPPAN技術者)の感想

佐野さんは、ヒットするコンテンツを生み出すためのひとつの手法として生成AIの可能性を提示しました。どのようなコンテンツがヒットするのか理論化することは難しい一方で、生成AIなら膨大な可能性を提示できるため、その膨大な可能性をすべて世の中にぶつけ、ヒットするものを探すということだと感じました。さらに、もしヒットするものが現れてきたら、なぜヒットしたのかを、その結果から見出そうとするやり方は、どちらかというと“技術者的な視点”だと感じました。

現在成功しているバーチャルキャラクターが長年にわたって支持され続けているのは、単に技術的な進化だけでなく、ファンとの対話や参加型の文化が育まれたという側面も考えられます。バーチャルヒューマンやAIシンガーの分野でも、こうしたコミュニティや文化の醸成が、受け入れられるための鍵になるかもしれません。

また、「アニメ調からの脱却」という観点から、実際に佐野さんがYouTubeにて公開しているコンテンツを見ると、実写の映像のような肌の質感や顔の表情、自然な動きや振る舞いを再現する技術を追求しようとしているのが感じられます。音楽やアニメでも、いかに受け取り手にメッセージを届けるかが重要であり、ビジュアルのリアリティもその一環ではないかと感じました。表面的なデザインの違いにとどまらず、リアルな表現が持つ力によって視覚的なメッセージがより強く伝わり、より多くの人々に響く可能性があるかもしれません。

AIを単なるツールとしてではなく、エンターテインメントの未来を切り開くパートナーとして捉え、その可能性を最大限に引き出そうとする姿勢が印象的でした。この挑戦が新たな潮流を生み出す日は遠くないのかもしれません。


今後も、ワークショップの他の登壇者による記事を掲載予定です。さまざまな視点からのレポートをお届けするので、ご期待ください!

謝辞

本記事の執筆に際し、佐野さん、CHAOSRU内藤さんに多大なるご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
https://www.chaosru.com/

会場と協力について

本イベントは、XRコミュニティ「Beyond The Frame Studio」と「NEUU」の協力を得て開催されました。

NEUU
XR技術の常設体験施設です。XR作品の展示や、イベントや映画祭の企画・開催をされています。
https://neuu.jp/

Beyond The Frame Studio
XRに特化した国際映画祭「Beyond the Frame Festival」をきっかけに誕生したコミュニティです。XRコンテンツ制作に関心があれば、初心者からプロまで参加が可能です。
https://btffstudio.com/

【メンバー募集】生成AI x クリエイティブの未来を一緒に探りませんか?

現在、生成AIに関するディスカッションや、実際に手を動かして検証を進めていけるメンバーを募集しています。コミュニティには約60名のメンバーが参加しており、グラフィック、映像、XRなど、さまざまなジャンルで活動するクリエイター、エンジニア、研究者が集まっています。

生成AIは、あらゆるクリエイティブ活動に大きな影響を与える可能性を秘めています。私たちは、実際にコンテンツを制作しながら、AIの現地点や未来について議論を深め、共に探求しています。生成AIに興味があり、一緒に学び、成長しながら新しい表現の形を追求したい方は、ぜひご参加ください。途中参加も大歓迎ですので、気軽にご参加いただけます。

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