【TOPPAN GENERATIVE TRIAL#2】第1回ワークショップ開催レポート
※本記事で紹介するワークショップは、2024年8月8日に終了しております。
こんにちは。生成AIを研究しているAIエンジニアの、TOPPANデジタル波多野です。
TOPPANデジタルでは、生成AIに関する様々な取り組みを行っております。その中でも新たな試みとして立ち上げたのが、CHAOSRU INC. と共同で展開する実験プロジェクト『TOPPAN GENERATIVE TRIAL』です。プロジェクトの詳細については、前回の記事に譲るとして、今回は8月8日に開催された第1回ワークショップの開催レポートをお送りします。
第1回となる今回は「AIツールを使った制作実験&発表ピッチ」をテーマに、XRコミュニティ「Beyond The Frame Studio」と「NEUU」の協力のもと開催されました。様々なテーマを、クリエイター、エンジニアがそれぞれの観点から制作したコンテンツを紹介し、生成AIの現在地、将来のクリエイティブに関する議論が行われました。
それでは、当日の発表者と発表テーマの紹介をしていきたいと思います!
また、発表者ごとに制作フローなどを交えた詳細記事を、近日中に掲載予定です。ご期待ください!
MILTZ:AIと模索する新たな創造性
江戸文字とストリートアートにインスパイアされたスタイルを特徴とし、ロゴやアパレルからマクラーレンのF1カーまで、様々な分野で活躍されているデザイナーのMILTZさん。ワークショップでは、AI生成画像とオリジナルのグラフィックを組み合わせた書道冊子の制作を通じて、自身が感じたAIがクリエイティブ表現に与える影響についてお話されました。
MILTZさんは、クリエイティブ表現において、創作者が注ぐ想像力や技術、努力が重要な要素であり、生成AIによる表現は「誰でも出力できる」という認識から心に響かないのではないかと分析しています。創作者の苦労が汲み取りづらい生成AIだからこそ、出力に一手間加える演出の重要性も強調されました。参加者からも、クリエイターにしか出せない表現に価値を感じるという意見があり、AIとクリエイティブ表現の関係性についての議論が今後重要なテーマとなりそうです。
こちらの詳細レポートは TOPPAN GENERATIVE TRIAL#3で掲載予定です。ご期待ください。
佐野 篤:生成AI×エンタメの未来
芸能事務所でのプロデューサーやNewsPicksのトピックオーナーなどの経歴を持つ佐野さんは、現在、バーチャルヒューマン事務所の事業化に向けて活動されています。ワークショップでは、東京各地をイメージしたAIミュージックビデオの制作事例が紹介されました。生成AIが将来的にエンタメコンテンツに与える影響、そして活用の未来とはどのようなものなのでしょうか。
佐野さんは、AIシンガーの強みとして、人間の歌手のように時間やリソースを多く消費せず、効率的に大量のコンテンツを制作できる点を挙げています。エンタメ業界では、ヒットの要因を事前に予測するのが難しく、場合によっては明確な法則がないこともあるそうです。そういった不確実性の中では、生成AIによるコンテンツの量産が有効なアプローチとなりそうです。
こちらの詳細レポートは TOPPAN GENERATIVE TRIAL#4で掲載予定です。ご期待ください。
内藤 薫:将来のクリエイティブワークフローを探る
XRやAIなど先端表現を駆使したクリエイティブ制作や研究開発、ツール開発を行うCHAOSRUの内藤さんは、TOPPAN GENERATIVE TRIALを共催するCHAOSRUの代表でもあります。ワークショップでは、広告ビデオや実写ドラマ、ミュージックビデオ、独創性の高いキャラを使ったアニメーションなど、多彩なテーマでの制作事例を発表されました。
内藤さんは、生成AIにより従来の手法では難しいリアルでダイナミックな表現が容易に実現できる一方で、狙った画を正確に出すことや、繊細な演技やカメラワークの制御が難しいという課題があると指摘しています。これらの課題は、生成AIの未来を考える上で重要なカギとなりそうです。
こちらの詳細レポートは TOPPAN GENERATIVE TRIAL#5で掲載予定です。ご期待ください。
中島 次郎:架空の村の観光プロモーション動画
TOPPANデジタルで生成AIを研究する技術者である中島(TOPPAN GENERATIVE TRIALの主催者の一人でもあります)は、今回、生成AIを活用し、いかに短時間で高品質な映像作品を制作できるかに挑戦しました。
実在しない架空の村「紅狐(こうこ)村」を、ChatGPT、Stable Diffusion (SD)、Runway Gen-3といった生成AIツールを駆使し、あたかも存在するかのような感覚を覚える映像を目標とし、プロモーション映像を作りました。AIの活用により、クリエイター以外でも、映像制作が容易に作れるようになるのでしょうか?
中島は、AIの活用により、映像制作の初期段階である「0→1」の創作部分は誰でも手軽に楽しめるようになったものの、映像の微細な表現や複雑な構成を検討する「1→10」のステップは、AIだけでは完全には達成できない領域だと分析しています。また、AI の使いどころとして風景やエフェクトが向いていると考えています。
こちらの詳細レポートは TOPPAN GENERATIVE TRIAL#7で掲載予定です。ご期待ください。
波多野 亮平:夏目漱石 夢十夜 の映像化
私のパートでは、AIとの共創作業をテーマに小説原作の映像化への挑戦について紹介しました。制作にはMidjourney、Runway Gen3を利用し、サイレント映画風のコンテンツ作りを目指しました。しかし、蓋をあけてみれば一部のカットのみの作成にとどまり、映像は未完成という悔しい結果となりました。
制作過程を通じて感じたのは、人物の表情や動き、カメラワークや照明といった演出を制御し、狙った画を正確に生成する難しさです。使用したAIツールでは、同じプロンプトでも異なる結果が生成されることが多く、ガチャ的な要素が残っています。これらの課題は世界中の研究者も認識するところで、日々新しい手法が提案されています。技術の進歩を追いつつ、映像完成を目指していきたいと思います。
こちらの詳細レポートは TOPPAN GENERATIVE TRIAL#6で掲載予定です。ご期待ください。
酒井 修二:生成AIエンジニアが考えるAIとクリエイターの未来
最後に、プロジェクト発起人であるTOPPANデジタルの酒井がイベントを締めくくります。酒井は、クリエイティブ業界におけるAI技術の10年後の展望についての自らの考察を語り、来場者たちと議論を行いました。AI研究者が考える、クリエイティブなAIの未来とは、どのようなものなのでしょうか?
酒井は、クリエイティブ業界におけるAI技術の10年後の展望について、2つの方向性を示しています。
1つ目は、生成AIによるコンテンツの大規模化・複雑化です。AIがより高度な作品を作れるようになる一方で、対話的なインターフェースや複雑な指示が必要になると予測しています。2つ目は、生成AIのツール化です。将来はAIがフィルタやエフェクトのように自然と制作過程に組み込まれると見ています。また技術者として、AIの精度向上だけでなく、人間の創意工夫を取り入れる余地や想定外の結果を受け入れることが重要だと述べ、クリエイターとの協力が必要であると指摘しています。
こちらの詳細レポートは TOPPAN GENERATIVE TRIAL#8で掲載予定です。ご期待ください。
以上が、当日の概要紹介となります。冒頭でもお伝えした制作フローを交えた記事をはじめ、今後も情報発信を進めていきます。ご期待ください!
【メンバー募集】生成AI x クリエイティブの未来を一緒に探りませんか?
現在、生成AIに関するディスカッションや、実際に手を動かして検証を進めていけるメンバーを募集しています。コミュニティには約60名のメンバーが参加しており、グラフィック、映像、XRなど、さまざまなジャンルで活動するクリエイター、エンジニア、研究者が集まっています。
生成AIは、あらゆるクリエイティブ活動に大きな影響を与える可能性を秘めています。私たちは、実際にコンテンツを制作しながら、AIの現地点や未来について議論を深め、共に探求しています。生成AIに興味があり、一緒に学び、成長しながら新しい表現の形を追求したい方は、ぜひご参加ください。途中参加も大歓迎ですので、気軽にご参加いただけます。
なお、参加にはDiscordへの登録が必要です。詳細はDiscord内でご確認いただけますので、まずはご登録ください。