【TOPPAN GENERATIVE TRIAL#3】 AIと模索する新たな創造性
第1回ワークショップ 作品発表
(グラフィックデザイナー: MILTZ)
こんにちは。TOPPANデジタル波多野です。
TOPPANデジタルでは、生成AIに関する様々な取り組みを行っております。
その中でも新たな試みとして立ち上げたのが、CHAOSRU INC. と共同で展開する実験プロジェクト『TOPPAN GENERATIVE TRIAL』です。
これまでの記事で、プロジェクトの詳細、2024年8月8日に開催されたワークショップのレポートをお送りしました。
今回の「TOPPAN GENERATIVE TRIAL#3」では、ワークショップの詳細レポート第1弾としてグラフィックデザイナーMILTZさんの発表を紹介します。
【発表者紹介】グラフィックデザイナー:MILTZ / ミルツ
江戸文字とストリートアートにインスパイアされたスタイルを特徴とし、ロゴやアパレルからマクラーレンのF1カーまで、様々な分野で活躍されているデザイナーのMILTZさん。イベントでは、AI生成画像とオリジナルのグラフィックを組み合わせた書道冊子の制作を通じて、自身が感じたAIがクリエイティブ表現に与える影響についてお話されました。
【発表内容】AIと模索する新たな創造性:AIと人の手によるグラフィックで作る書道冊子
MILTZさんは、AIが自動で生成する画像に対して、驚きこそあれど心が動かされることは少ないと語ります。MILTZさんが重要視しているのは「やった感」、すなわち人間が作り出したものに対して感じる労力や情熱の痕跡。そして、AIに対しても、人間の手を加えることで感情が宿る作品へと昇華させることができるのではないかと模索されています。
この「やった感」を生み出すための方法は様々かもしれません。MILTZさんは、実際の作品を例に、この「やった感」を生み出す方法を紹介されました。
①アナログな手法を加えるアプローチ
AIが生成した中国の掛け軸風の画像に、MILTZさんが書いた文字を加えたものをスキャン。スキャンの際に意図的に画像を動かすことで、生成画像に手を加えました。このニュアンスはAIで一発で出すことができず、アナログな手法の方が思い通りの作品になると語られました。
②AIと手書きの架空文字のミックス
AIで生成したリアルな風景画像に、MILTZさんが手書きの架空の文字を加えた作例。意味ありげで不思議な世界感、そして現実と空想の境界をぼかすような独特な作品となっています。
③AI画像の組合せ編集
AIが生成した膨大なバリエーションの中から最も適したものを選び、再編集してひとつのグラフィックに落とし込む。これも完成度が高ければ、ひとつの「やった感」につながる行為だと語られました。
いかがでしたでしょうか。ここまでMILTZさんの発表を紹介しました。
発表に対する筆者(TOPPAN技術者)の感想
近年の生成AI技術の発展により、プロンプトさえ入力すれば、誰でも簡単に作品を出力できるようになりました。しかし、MILTZさんが目指しているのは、誰にでも作れるものではなく、AIを活用しつつ、自分だけのクリエイティブなアプローチを見つけ出すことだと感じました。
AIの能力は人間の想像を超えるものになってきているようにも見えますが、その進化に追いつきながらも、自分自身の表現力やオリジナリティを磨いていくことが重要だと感じました。
MILTZさんの取り組みは、人間の役割や表現の価値を再定義する試みともいえるかもしれません。今後、作品の表現がどう変化していくのか、非常に興味深いテーマだと感じました。
MILTZさんがご発表された「やった感」を感じる作品作りには、人間がどこでどのように関わるか、そのプロセスを考えることが大事なのではないでしょうか。「人間の手を加えることで感情が宿る」という考え方は、AIと人の創作が対立するのではなく、むしろ補い合えることを示しているのかもしれません。
また、従来のアートと同じように、生成AIによるアート作品についても、その作品の背景というものが重要なのは、変わらないのだと感じました。MILTZさんの作例のように、AIの技術的な要素と人の感性的な要素を組み合わせることで、新しい表現が生まれ、デジタルアートの可能性をさらに広げていく方法のひとつになると思います。
実は生成AIの背後には、技術者の知恵や労力が多く詰まっており、その点を理解することで、AIコンテンツの魅力をより深く感じられるかもしれません。将来的には、技術者の熱量や情熱がより直感的に伝わるようなAIコンテンツが登場し、私たちの創作体験に新しい価値をもたらす日が来るかもしれません。
今後も、ワークショップの他の登壇者による記事を掲載予定です。さまざまな視点からのレポートをお届けするので、ご期待ください!
謝辞
本記事の執筆に際し、MILTZさん、CHAOSRU内藤さんに多大なるご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
https://www.chaosru.com/
会場と協力について
本イベントは、XRコミュニティ「Beyond The Frame Studio」と「NEUU」の協力を得て開催されました。
NEUU
XR技術の常設体験施設です。XR作品の展示や、イベントや映画祭の企画・開催をされています。
https://neuu.jp/
Beyond The Frame Studio
XRに特化した国際映画祭「Beyond the Frame Festival」をきっかけに誕生したコミュニティです。XRコンテンツ制作に関心があれば、初心者からプロまで参加が可能です。
https://btffstudio.com/
【メンバー募集】生成AI x クリエイティブの未来を一緒に探りませんか?
現在、生成AIに関するディスカッションや、実際に手を動かして検証を進めていけるメンバーを募集しています。コミュニティには約60名のメンバーが参加しており、グラフィック、映像、XRなど、さまざまなジャンルで活動するクリエイター、エンジニア、研究者が集まっています。
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