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ジモノミッケ!と、グッドデザイン賞と、時々TOPPAN

評価とはとても難しいものである。

昔話になるが、私が小学2年生の頃、図工の時間に描いた絵が校外の絵画コンクールで偶然優秀賞を受賞したことがある。
(ちなみに本記事のサムネイル画像は当時の私が描いた『やさしい牛』という絵である)

私には絵心というものがなかったため、クラスメイトはもちろん担任の先生までとても驚いていた。

だが、私が本当に驚いたのは受賞した後のことだった。

今まで校内の絵画コンクールでは一度も評価されたことのない私だったが、この一件以降、何を描いても校内コンクールで表彰されるようになったのだ。

私は嬉しさよりも、この奇妙な現象に対しただひたすら困惑し、世の中とはこんなのものなのかという厭世観を齢8にして獲得してしまったのだった。

その2年後、私は転校することになるのだが、転校先の校内コンクールでは一度も絵の才を認められることがなかったため、やはり私は大した絵心など持ち合わせていなかったということが証明されたのだった。

人の評価とは大してアテにならないものである。
だがしかし、同時に我々はお互いを評価し合いながら生きている。これもまた事実なのである。

一企業戦士である私も、隣の席に座っているあの子も、この記事を読んでくださっているあなたもきっと、上司をはじめとする様々な人の評価によって査定されて生きているだろうし、時には納得のいかない思いに頭を悩ませることもあるのではないだろうか。

『こんなに頑張ったのに評価されなかった』
『あまり頑張っていないのになぜか評価されてしまった』

色々な思いが錯綜するやるせない世の中ではあるが、私は過去の経験を踏まえてこう考えるようになった。

”過程はどうあれ、評価されたモノだけが発信の機会を得られるのだ”と。

どうして企業の公式アカウントで、私が勝手気ままにこんなことを書いていられるのかというと、私が過去に書いた記事が”スキ”という形で評価されたからに他ならないからである。

故に私は声を大にして言いたい。

―どうか、この記事に”スキ”をすることを忘れないでくださいー


グッドデザイン賞への挑戦

先述の通り、評価とはとても大切なものである。

我々が開発した地産地消促進サービス『ジモノミッケ!』はとても素晴らしいものであると、どれだけ胸を張って声高に価値を叫んだところで、全く評価を受けていない状況では何の意味もなさないのである。

故に私たちは、まずこのサービスを第三者に評価してもらおうと考えたのだった。


「……グッドデザイン賞に応募してみるのも良いんじゃないか?」

上層部の発したこの一言から、すべては始まった。

日本国民であれば誰しも一度は耳にしたことがあるであろうこの賞。
有名すぎるがあまり、賞の詳細について咄嗟に説明できる者は誰一人いなかった。

…そもそもこの賞、デジタルサービスも対象になるのであろうか。

そんな事さえ知らない私たちに出来ることは、ただ神妙な面持ちで頷くことだけだった。

かくして、2023年度グッドデザイン賞への挑戦は幕を開けたのであった。

※グッドデザイン賞とは、公益財団法人日本デザイン振興会によって毎年優れたデザインに送られる賞のことで、国内認知率は約84%、60年以上の歴史を持っています。受賞作品は『Gマーク』を表示することが出来ます。詳細が気になる方は是非公式ホームページの説明を参照してください。

受賞までの道のり

グッドデザイン賞を受賞するためには1次審査と2次審査を通過しなければならない。

1次審査は書類選考である。
所定の応募フォーマットに応募作品をPRする説明文を記載し、サービスや商品がグッドデザイン賞足り得るかどうかを審査してもらうのだ。

1次審査を突破すると、幕張メッセで行われる2次審査に駒を進める事ができる。

ここではサービス毎に小さなブースが与えられ、PR用の展示を自由に行う事ができる。
そして2次審査を突破すれば、晴れてグッドデザイン賞授与となるのだ。


我々が最初に行ったこと。それは応募カテゴリの選定である。

実はグッドデザイン賞には約20のカテゴリーがある。
その中からサービス等の特徴にあったカテゴリーを選択することが求められるようだ。

グッドデザイン賞はカテゴリーごとに評価・授与がされるため、このカテゴリー選定は最初の大事な選択なのである。

悩みに悩んだ結果、我々は『一般・公共用システム・サービス』というカテゴリーに応募することを決めた。

「さすがに1次審査は落ちないだろう」
そんな自信はありつつも、ここで落とされてしまったらこの先どうしようか、と少し不安になる。

なんだか受験した滑り止め校の結果を待つような気分だな。
忘れかけていた感覚に懐かしさを覚えながら(懐かしくない)結果発表まで約1か月半待つことになった。

1次審査通過の通知はあっさりと届いた。

「まぁ、さすがにね!」
1次審査を通過することなんて当たり前だからと言わんばかりにチームのメンバーも強がっていたが、その目にはほのかな安堵の色が滲んでおり、皆同じ気持ちでいたのであろうことが伺えた。

1次審査を通過してからの流れは怒涛だった。
幕張メッセのブースで何を展示し、どのようにアピールをすれば良いのか皆目見当がつかないのである。

「アプリのデモ機を置くだけでは多分落選するな…。」

根拠はないが、確信めいたその思いに突き動かされ、我々はブースで展示する用のパネルを作成することにしたのだった。

制作期間として与えられた猶予はわずか1か月。

パネル製作に積極的に動いたのは我らが課長だ。
課長は飾りつけやデザインに強いこだわりを持っており、あらゆる賑やかしを駆使しながらブースを彩るのが得意なのだ。

(ちなみに普段、バランス調整は主に私の先輩が担っている。
A型である彼女の眼は水平器のように正確で、わずかなズレも見逃さない。そしてB型である私は、ただオロオロとするだけなのである。)

『デジタルサービスという枠組みを飛び出し、地域の繋がりを創出する』

そんなイメージをデザインに落とし込んでいった結果、見事立体的なパネルが完成した。そして我々は2次審査へと臨んだのだった。

ブースで実際に展示したパネル

ちなみに申し込みから2次審査に至るまでの応募費用は236,500円。受賞率も約28%と決して高くはない。

これに加え、パネル製作にもそれなりの時間とお金を費やしたのだ。

今までの流れを見れば、どれだけ我々が本気でこの賞を獲りに行っているかがわかるだろう。

グッドデザイン賞を獲れば皆から評価してもらえる、そんな甘い考えは毛頭無い。

あるのはただ、グッドデザイン賞を通してジモノミッケ!の価値を皆に知ってもらいたいという想いだけである。

そのスタートラインに立つために、我々はこの賞に挑戦したのであった。

8月18日

この日が何の日か知らない者はあまりいないだろう。

そう。私の誕生日である。米の日などというネットで少し調べれば出てくる瑣末なうんちくを披露した者は大いに反省していただきたい。

このめでたい日に、一つの吉報が届いた。

そう。

我々のサービス、ジモノミッケ!が見事グッドデザイン賞を受賞したのである。
(念のため補足しておくと、この日は受賞内定者への連絡がなされた日であり、グッドデザイン賞事務局による公式発表までは受賞内定を公表してはいけないというルールがある。)

受賞展での写真

ちなみに、写真の左に映っているのはパネル製作に尽力いただいた課長。右に映っているのはA型の先輩である。

審査員の方から頂戴した評価コメントがあるのでこちらに掲載させていただく。グッドデザイン賞受賞ページのリンクも併せて掲載するので良ければご覧いただきたい。

自分が暮らしている地域で作られた農産物であっても、市場を通して仕入れるだけで過度の移動や時間が発生し、鮮度も落ちてしまうという課題に向き合い、新しい地産地消の仕組みの実現を目指している。飲食店等の地域の実需者が買いたい農産物の情報を先に登録して、生産者の応札を可能にするという、需要側からのマッチングの仕組みも、B2B方式での地産地消の仕組みとして魅力的である。


展示会場で拝見したサービスは有形のものが多く、本取組がグッドデザイン賞というフィールドで評価いただけるのかは正直不安であった。

故に、我々が価値と置いている『新しい地産地消の仕組みを目指している点』を評価いただけたのはとても嬉しい。

上層部のひとことから目指すことになったこの賞だが、いつの間にか我々の中でグッドデザイン賞は大きな存在へと変わっていったのであった。

受賞後の変化

グッドデザイン賞を受賞後、変化したことが大きく3つある。

1つ目は、サービス紹介のホームページが華やかになったことである。

ホームページにアクセスすると、右上に『Gマーク』があるので是非ご確認いただきたい。

物事は伝え方が9割という金言をあちらこちらで目にするが、9割という数値の正確さはともかく、インパクトのある伝え方が大切であることに異論を唱えるビジネスマンはいないはずだ。

2つ目は、お客様の反応が変わったことである。
本サービスに対するご紹介をした際、「ほぅ」といった反応を見せて下さる方が明らかに増えた。

プレゼンテーションの冒頭で相手に関心を持ってもらえるというのはとても大きい。

3つめは、社内表彰にて『ジモノミッケ!』が高く評価されたことである。

これは私が過去に経験した校内絵画コンクールの事例と似ているかもしれない。

もちろん表彰に際して、サービスの取組や実績が主となっていることは言うまでもないが、グッドデザイン賞を受賞したことも大きな要因の一つに違いない。

受賞をうけて

このように、グッドデザイン賞受賞を皮切りに社内外からの評価が少しずつではあるが変わり始めた。

しかし、我々は再認識しなければならない。

周りからの評価が変わったからといって、サービスの中身が変わったわけではないという事を。

”過程はどうあれ、評価されたモノだけが発信の機会を得られるのだ”

出展:私

あくまで我々は、サービスの価値を発信する機会を得られたにすぎないのである。

今回のこのチャンスを無駄にしないためにも、サービスの提供を通じて価値をより確かなものにしていかなければならない。

デジタルで人と食と農をつなぎ、未来を耕していくためにも、私たちの長い戦いはまだまだ続くのであった。

※ジモノミッケ!とは、食農業の地産地消を実現する需給マッチングプラットフォームです。資料請求や詳細情報については下記リンクをご参照ください。