【展示会取材レポート】CEATEC 2024「AI for All」のTOPPANデジタルブースを取材しました。
TOPPANデジタルの技術戦略センターは、2024年10月15日(火)から18日(金)の4日間にわたり、幕張メッセで開催された「CEATEC 2024」の特別企画「AI for All」に出展いたしました。
本記事では、技術戦略センターのnote編集を担当している佐藤が、CEATEC 2024の展示会場で取材した内容やその様子をご紹介します。
リアルとデジタルの両輪でコミュニケーションの未来をデザインする
私たちは、CEATEC開催2日目のお昼頃に会場を訪れました。多くの来場者で賑わい、展示ブース周辺も活気にあふれていました。
今回のTOPPANデジタルの展示ブースは、「リアルとデジタルの両輪でコミュニケーションの未来をデザインする」というテーマのもと、3つのエリアに分かれた6つの技術展示とデモンストレーションを行っていました。
どの展示やデモも常に来場者の関心を集め、非常に盛況の様子でした。
TOPPANデジタルの展示ブースはCEATEC 25周年の特別企画「AI for All」のエリアに設置されていました。
今回の展示ブースの近くあるステージでは、国内外を代表するさまざまな企業による講演が行われており、多くの学びがありました。
それでは、各エリアと展示内容を紹介します。
展示エリア①「生成AIエリア」
TOPPANの考える、これからのコミュニケーションでは、生成AIによって具現化された「イマジネーション」が、リアルフィールドにも作用することで、自身の創造的思考を実在感・臨場感をもって他人と共有できるようになります。
そのような『頭の中にある「イマジネーション」を具現化して伝えることができる未来』の実現に向けて、生成AIを活用した展示を行っていました。
AIプロジェクションマッピング
ユーザーが投影対象を変更することで投影されるコンテンツがAIで生成され変化したり、投影対象を移動させると映像も合わせて変更する、インタラクティブなプロジェクションマッピングシステムです。(説明資料より)
ブースでは、投影用の対象物(コップ型や球体の発泡スチロール・Tシャツなど)がスクリーン前に置いてあり、投影エリアの隣にあるPCで投影イメージを指示する様子が見られました。
説明員が説明しながら実際にプロジェクターの前のオブジェクトを動かし投影内容を次々に変えていく様子を、大勢の方が興味深く見ていました。
テーマパークや都庁でも行われているプロジェクションマッピングですが、多くの事前準備や大がかりな設備が必要なものだと思っていましたが、TOPPANデジタルのAIを使うと、文章からすぐに生成され、インタラクティブに楽しめるものとして新たな可能性を感じました。これをお店に設置して動きのあるディスプレイや、一瞬で場面が変わる舞台装置としても活用できるのではないかと感じました。
AIによる3Dシーン生成
AIが生成した3Dシーンをヘッドマウントディスプレイで視聴できる体験型展示です。
画像生成AIを基に、自由視点映像技術を組み合わせたAIによる3Dシーン生成技術で入力するテキスト情報(生成指示)から、様々な高精度・高精細な3Dシーンを全自動で生成することが可能です。(説明資料より)
ブースには、この技術について説明している動画が流され、生成した3Dシーンを体験できるヘッドマウントディスプレイ(HMD)が置いてありました。生成された3D映像はHMDで体験することで、没入感のある映像体験ができるそうです。大勢の方が体験し、驚きの声を上げていました。
今回は事前に準備した様々な映像を体験者に紹介しており、生成された3D映像はHMDで体験することで、没入感のある映像体験ができるそうです。今後は生成時間の短縮を目指しているそうで、会話をしながら文章を入力し、自分の思い描いた世界をリアルタイムで共有できる未来がすぐに来るかもしれません。
教育分野へのLLM活用
TOPPANデジタルと東京書籍は、LLMを活用した教育DXに取り組んでおり、今回ブースの大型のタッチディスプレイで紹介されていたのは、作問・採点をAI技術で行うデモアプリです。「小学5年生」や「理科」などを選択すると、その場で選択問題や記述問題が自動で作成され、回答に対する採点も自動で行われるようすを体験できました。
単元の選択、問題の種類(選択問題・記述問題など)、問題数を設定することで、条件に合った問題が数秒で作成され、問題を回答したのちの採点もすぐ行われて、問題の解説も生成されていました。
回答後、採点が即座に行われ、解説も生成される様子に体験者は驚いていました。教科書データを使用しているため、学習内容に沿った問題作成や高精度な採点が可能です。さらに、この技術で苦手分野を集めた自分専用の問題集を作成するといった用途にも期待が膨らみました。
展示エリア②「カラーマネジメントエリア」
実世界(リアル)の「見え」を、画像や映像のデジタルで忠実に再現することは難しく、環境・デバイス・眼の特性などの違いによって、人々に見えている「色」は同じではありません。
このエリアでは、『異なる人々が時間も場所も超えて同じ感覚(色知覚)を共有できる未来』の実現に向けた、デジタルを介したリアルフィールドの「色」の取得・表示技術を展示していました。
円滑なカラーコミュニケーションの未来:ディスプレイ色の見え個人差を解消
ディスプレイの色の見え方には個人差があるため、カラーコミュニケーションが成立しないこともあります。この課題を解決するために進めている「ディスプレイ色のパーソナライズ表示技術」の研究紹介をしていました。
この技術は、個人ごとの色の感じ方を考慮したデータを活用し、ColorSeeker® ※1と組み合わせることで、環境やデバイスに左右されず、個々に最適なディスプレイの色再現を目指しているそうです。
ブースでは、提示されている紙の白に対して来場者が同じ色に見えるiPad上の「白」を選び、他の参加者の選んだ「白」と比較することで、色の見え方の違いを体感するデモンストレーションが行われていました。
デモを体験してみましたが、他の方が「白」と選んだ色が自分には少し赤っぽいように見えたりと、本当に色に見え方というのは個人差があるんだなと勉強になりました。(写真のマトリクスの赤枠が筆者の選んだ「白」)
来場者は、自身の「白」の選択が他人と異なることを体感し、色の見え方の個人差に感心している方が多かったです。
このデモは大手ニュースサイトで取り上げられました。その影響もあり、体験希望者が絶えない盛況ぶりでした。
※1 ColorSeeker®:一般的なモニターで高精度なカラーマネジメント技術を容易に利用でき、適切な色を再現するクラウドサービス
カラーマネージメント技術の活用
TOPPANでは、撮影した画像の色を高精度で再現する「CAM-FIT®」というサービスを提供しています。
このサービスは、一般的なカラーチャートを用いた色変換に加え、分光反射特性を考慮した独自の高精度カラーマネジメント技術を組み合わせることで、撮影された画像データを実物に近い自然な色で再現することを可能にしています。
ブースでは、カラーチャートを使用せずに実物の色を正確に取得する、TOPPAN独自のAIによる色予測技術が紹介されていました。この技術を用いたデモでは、撮影ブースで撮影した被写体(りんご)の色をAIが正確に推定し、その色を隣接するディスプレイで忠実に再現していました。また、ディスプレイ上では「一般的な色再現」と「TOPPANの技術による色再現」を比較でき、色の違いを視覚的に確認できる構成になっていました。
展示エリア③「遠隔コミュニケーションエリア」
遠隔地にいる人同士の言語による会話だけでなく、指差しや目線、ボディーランゲージといった非言語のコミュニケーションを支援することで、話者の細かい「意図」を、遠隔地の人と共有することが可能になります。
『遠隔地にいる人同士でもデジタル空間を介して、対面と同等のコミュニケーションが可能となる。』未来を目指して、非言語の遠隔コミュニケーション支援技術の展示を行っていました。
ポインティング共有可能なリモートコミュニケーションシステム
ブースでは、言葉だけでは伝えにくい位置や対象物を、視覚的にわかりやすく共有するためのデモを2つ実施していました。
1つ目の展示では、映像に映るオブジェクトをタブレット上でタップすると、現実のオブジェクトにライトが照射され、指示箇所を表示する仕組みが紹介されていました。この仕組みの特徴は、ライトによる照射でその場にいる複数人に指示箇所を示せる点です。
2つ目は、RemoPick® ※2が展示されていました。これは作業者が装着するスマートグラスで撮影した映像(作業者の視界)を、作業者と指示者の間で共有するシステムです。さらに、指示者はその映像にポインターを使って視覚的に指示を出すことができ、より正確な遠隔作業指示が可能となる点が特長です。
りんごのように色や形が似ている物が複数ある場合、「このりんご」と指し示すのが難しいことがありますが、このシステムを使うことで「これ!」と直感的に相手に伝えられるのは非常に便利だと感じました。
この技術により、ビデオ通話など従来の遠隔コミュニケーションでは伝えにくかった具体的な指示が可能となり、よりスムーズなコミュニケーションが期待できます。今後、ビジネスや教育、医療など、さまざまな分野での活用が期待されます。
※2 RemoPick®:スマートグラスを活用した遠隔作業支援サービス
さいごに
今回のTOPPANデジタルのブースでは、「リアルとデジタルの両輪でコミュニケーションの未来をデザインする」というテーマに合わせてリアルとデジタルの融合による新しいコミュニケーションの形を様々な角度から紹介できた展示になっていたのではないかなと感じました。取材日だけでも多くの来場者が訪れ、TOPPANデジタルの技術が高い関心を集めていることを感じました。説明員によると、連日大盛況で、用意していたチラシがすぐになくなってしまったとのことです。
また、AIやAR、カラーマネジメント技術を活用した新しい価値の提案に対して、会場では多くの来場者と意見を交わす機会に恵まれ、説明員として参加した技術者にとっても新たな視点や発見が得られる有意義な場となったと嬉しそうにお話されていました。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。この記事を読んでTOPPANデジタルの研究活動に興味を持っていただけた方はぜひ、次の展示会にお越しいただければ幸いです。
これからもTOPPANは「社会的価値創造企業」として、リアルとデジタルの力を最大限に活かしながら、新たな技術やアイデアの探求を続けてまいります。そして、これらの取り組みを通じて生まれる新たな価値を、展示会やイベントを通じて皆さまにいち早くお届けすることを目指しています。
■編集者