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TOPPANが沖縄でスマート水産業に挑むワケ

こんにちは!TOPPANデジタル沖縄サテライトオフィス「ICT KŌBŌ®︎ URUMA」です。今回は、私たちがICT KŌBŌ®︎でスマート水産業の実現に向けて取り組んでいる内容についてご紹介します。


スマート水産業とは?

スマート水産業とは、ICTやAI、IoTを活用して、従来の水産業の作業効率や生産性を高める新しい試みです。これにより、水産業におけるデータの収集、分析、管理が効率化され、生産性の向上と品質の安定化が実現します。スマート水産業は、持続可能な漁業の実現や、働き手の労働環境の改善にも大きく期待されています。

TOPPANがスマート水産業に取り組む背景と事例

TOPPANデジタルは、DX開発拠点である「ICT KŌBŌ® URUMA」を2021年6月に沖縄県うるま市に開設し、デジタル技術を活用して地域の課題解決に取り組んでいます。

うるま市の特産品といえば・・・そう「モズク」です!沖縄県のモズク生産量は全国の9割以上を占め、その中でも、うるま市勝連(かつれん)地域は県内の約4割を占める水揚げ量を誇っています。

モズクの水揚げの様子

全国一のモズク生産量を誇る勝連漁業協同組合(以下、勝連漁協)は、モズクのブランド化を推進し販路拡大を目指しています。一方で、少子高齢化による人手不足や後継者不足といった課題に直面しています。

こうした背景から、私たちICT KŌBŌ® URUMAは、うるま市の主要産業であるモズク養殖をはじめとした、漁業の共通する課題を解決するためのソリューションを開発しています。そして、2024年3月から勝連漁協と協力して実証実験を始めました。

TOPPANデジタルが開発した「漁業DXソリューション」について

私たちが開発した「漁業DXソリューション」は、次の2つのアプリで構成されています。2024年3月から5月の間、ほぼ毎日モズクの水揚げに立ち会い、実際に漁協の方々にアプリをご利用頂きました。

重量管理アプリ

従来、モズク水揚げ時に発行される伝票は、重量・カゴ数・ロットを手書きで記入し計算していました。しかし、「重量管理アプリ」を使用することで、水揚げ時に各漁師のモズク重量をタブレットに入力すると、カゴ重量が自動的に差し引かれ、正味の重量が計算されます。

これによって手計算によるミスを防ぎ、ペーパーレス化を実現して作業効率が向上しました。また、入力された重量はロット毎に保存されるため、水揚げ後の加工工程以降のトレーサビリティ管理にも役立ちます。

このアプリを今シーズン、実際に漁協の方に使っていただいたところ、最初は戸惑いもあったものの、次第に「こんなこともできる?」といった要望が次々増え、徐々にDXが浸透していきました。

重量管理アプリを利用頂いている様子

品質判定AIアプリ

従来、モズクの品質判定は、太さやぬめりの状態を熟練担当者が経験に基づいて目視で行っていました。しかし、品質判定AIアプリでは、品質判定の要素となる「太さ」や「ぬめり」の状態をタブレットで撮影した画像を基に認識し、TOPPANデジタルが独自に開発したロジックによりAIが判定します。

品質判定AIによって、高品質のモズクの選別が人手に頼らずに行うことができ、人手不足や後継者不足の課題をサポートします。

このアプリはまだ開発中ですが、今シーズンを通じて貴重なデータが蓄積されました。

品質判定AIでモズクの画像を撮影している様子

漁協での実証実験においてスマート水産業を実現するために工夫したこと

現場の意見を尊重

漁協での実証実験においては、現場の意見を尊重することが重要でした。開発目線では良かれと思って実装した機能が、実際には使いづらかったり、私たち開発者の視点では気づかない要望が出たりすることがありました。

日々、漁協の方々との密なコミュニケーションを図ることで、現場の運用に即した実用的なシステムの開発が可能になりました。

現場要望をすばやく反映

漁業者からのフィードバックを頂きながら、スピード感をもってシステムの改善を行いました。例えば、操作性の向上や必要な機能の追加など、現場の要望を迅速に反映することで、使いやすさを向上させました。

現場の方々との信頼関係の構築

現場の方々との信頼関係を築くことも、実証実験の遂行には欠かせないポイントでした。現場の意見や要望に耳を傾け、システムの開発の進捗状況を共有しました。そうすることで、漁業者の方々が安心してシステムを利用できる環境を整え、相互の信頼を深めることができました。

さらに、4月に開催された「モズクの日」のイベントに参加し、モズクの認知度向上にも努めました。このようなイベントで、地域住民との交流を深め、私たちの技術や取り組みを紹介することで、地域社会全体にスマート水産業の価値を広めることができました。その結果、現場の方々との信頼関係が強化され、地域全体でスマート水産業を推進する基盤を築くことができました。

モズクの日に品質判定AIによるモズク試食体験を出展

勝連漁協での実証実験の効果と課題

実証実験で得られた効果

実証実験の結果、漁協の方からこのようなコメントがありました。

  • 「これまではモズクの水揚げ時、重量を電卓で計算していたが、アプリの値を信頼できるようになった。

  • 「アプリで1日の水揚げ量がすぐに分かるのが良い!

  • 品質判定AIも早く実用化してほしい」

これらのフィードバックからもわかるように、アプリの導入により手作業や紙ベースの管理が減少し、漁業者の負担が軽減されました。また、品質判定AIの早期実用化に対する期待も高まっており、今後の開発に向けたモチベーションとなっています。

全体として、TOPPANが開発した漁業DXソリューションは、現場のニーズに応じた柔軟な対応と、要素技術の蓄積によって、地域の水産業に新たな価値を提供しています。これからも、現場の声を大切にしながら、より良いシステムの開発に取り組んでいきます。

実証実験で判明した課題

一方で、実証実験を通じていくつかの課題も明らかになりました。前述の通り、開発目線とユーザー目線が異なり、その相違を埋めていくのに苦労しました。また、システムの開発や運用に関するコストも課題として挙がりました。

漁業DXソリューション開発を進める上で活用した補助金

コスト面の課題に対し、沖縄県の「ICTビジネス高度化支援事業」の補助金を活用しました。こちらを活用することで、初期投資の負担を軽減し、スムーズな開発が可能となりました。

今後の広がり

勝連漁協で始まったスマート水産業の取り組みですが、最近では水産経済新聞社の海藻特集に取り上げられたり、他市町村の方々が漁業DXソリューションの視察に訪れたりと、着実に取り組みが広がっています。

スマート水産業の展望とTOPPANのチャレンジ

TOPPANは、今後も地域社会との連携を強化し、スマート水産業の浸透に努めていきます。地域のニーズに即した技術開発や、地域との協力体制を構築することで、持続可能な漁業の実現を目指します。

TOPPANが沖縄でスマート水産業に挑む背景には、地域社会の課題解決と持続可能な未来への貢献という目標があります。今後もこれらの活動を通じて、水産業の未来を切り拓いていくために、私たちは挑戦し続けます。