PLATEAU AWARD 2023に参加して奨励賞を受賞するまで
自己紹介
はじめまして。TOPPANデジタル株式会社に2023年9月に入社したUnityエンジニアの高原です。
普段の業務ではメタバースショッピングモールである「メタパ®」の開発・保守や3D・XR関連のソリューション開発に携わっています。
また個人でもUnityやUnrealEngineでゲームやXRコンテンツやVRSNSのワールド制作を行っています。
たまにゲームジャムやハッカソンに参加したり、UnityやUnrealEngineのイベントでLT(Lightning Talk)登壇をしています。
最近だとUnity お・と・なのLT大会 2023に登壇したり、Tokyo Node XR ハッカソンのファイナリストとしてセッションを行ったり、withARハッカソンにチーム参加して小田急電鉄様からNEUU賞をいただいたりしていました。
本記事について
先日私が所属しているメタバースチームでPLATEAU AWARD2023という作品コンテストに参加し、PLATEAUを活用したコンテンツの企画・開発・発表を行い結果として奨励賞をいただきました。
本記事ではどうしてPLATEAU AWARD2023に参加することになったのか?どのようにしてコンテンツを作ったか?ということについて書かせていただこうと思います。
PLATEAUとPLATEAU AWARDについて
そもそもPLATEAUとPLATEAU AWARDとはいったい何なのでしょうか?
PLATEAU(プラトー)は国土交通省が推進する日本全国の都市デジタルツイン実現プロジェクトのことで、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を進めています。PLATEAUを利用すると現実の地形、建物の再現が手軽に無料で行うことができます。(商用利用も可能です。)
また3Dモデルだけでなくどのモデルのメタデータも整備されており、その建物モデルの名称、用途、住所、高さ、階数…etcなどの情報にもアクセスすることができます。
そしてPLATEAU AWARDは、PLATEAUを活用したサービス・アプリ・コンテンツ作品コンテストになります。
第一回のPLATEAU AWARD2022では実在の街のPLATEAUモデルを利用してバーチャルスノードームを作成することができる作品「snow city」がグランプリを受賞しました。
2回目となるPLATEAU AWARD 2023は2023年6月から2023年11月末までの半年間を作品募集期間とし、一次選考が2024年1月に行われ、最終選考は2024年2月に行われました。
今回TOPPANデジタル株式会社に入社したばかりのときにひょんなことからPLATEAU AWARD2023に参加することになったお話をしたいと思います。
参加のきっかけ
すべての始まりは2023年10月30日の朝、自チームのSlackにPLATEAU AWARD2023についての情報を共有したことでした。
弊社のSlackでは日々業務に関係する技術情報、直接は関係しないが将来的に役立ちそうな技術情報、ハッカソン、ゲームジャム、勉強会などのイベント情報の連携が積極的に行われています。
この時すでに締め切りまで大体1か月だったため参加してみませんか?という意図はなく、PLATEAUを活用した優れたコンテンツが見られるイベントとしてPLATEAU AWARD2023についてSlackに情報を連携しました。
しかし…その日の午後の打ち合わせで上長の方から「せっかくだから出よっか」(!?)との鶴の一声をいただき、急遽メタバースチームのメンバーでPLATEAU AWARD2023に参加することになりました。
元々個人でよくハッカソンに参加してはいたのですが、会社のメンバーでハッカソンに参加するのは初めてだったのと、締め切りまでの期間が一か月ということもありワクワク半分、不安半分といった気持ちでした。
企画検討
参加が決定した日からの一週間はひたすら企画の作成と検討を行っていました。
締め切りまで一か月、こと細かに実装することは難しいことは分かっていたため、実装にそこまで時間がかからず、かつ審査員に響きそうなコンセプトを考えることにしました。
結果的に一週間で合計11案ほど企画を作成しました。
その中でも弊社の理念である「社会的価値の創出」にマッチし、PLATEAUをメインに活用できている「誰でもいつでもどこでも使えるデジタルツイン作成ツール」である「PLATEAU Sky Printing」の企画を採用案として開発を始めることにしました。
なおコンテンツ名の最後の「Printing」ですが、弊社の旧名である凸版印刷の印刷の意味と、紙を印刷するように手軽に素材を作成できるという意味で「Printing」という言葉を選びました。
開発した機能
「PLATEAU Sky Printing」はPLATEAUを活用して全国各地の都市の光景を再現し、好きな都市の風景の画像や360度画像や動画を⽣成することができるバーチャル都市素材作成ツールです。
「誰でもいつでもどこでも使えるデジタルツイン作成ツール」をコンセプトに、事前に自分でPLATEAUのデータをダウンロードせずとも、アプリをインストールしてもらえれば素材作成ツールが使える簡易さと分かりやすいUIを意識して開発しました。
UntiyとPLATEAUとCesium(3D地形を表示できるオープンソースのプラグイン)を組み合わせて5つの機能を実現しています。
1.全国PLATEAUモデル表⽰機能
PLATEAUとCesiumを組み合わせて、全国137か所の都市モデルをアプリ内で再現できるようにしました。
PLATEAUモデルの事前ダウンロードは不要で、アプリ内でダウンロード、モデル生成を行っています。
また、夜の時間帯にした際に建物にライトがついていないと見た目が廃墟のようになってしまうため、自動でライトを設置する機能も実装しました。
2.太陽・雲・天候調整機能
Unityのフォトリアルな空や天気や光源のシュミレート機能を活用し、空の多彩なシュミレーションができる機能を実装しました。
指定した時間の太陽の位置、明るさ、太陽光の⾓度の確認や雲の量、⾵による雲の動きの確認、それぞれの天候による⾵景(晴れ、曇り、⾬、雪)の確認が可能となっています。
3.エフェクト機能
Unityのエフェクト機能を活用し、下記の18種類のエフェクトを⽤意しました。
コントラスト/彩度/⾊相/露出の強さ/ブルーム
環境光の強さ/⾊収差/被写界深度/⿂眼レンズ
ビネット効果/フィルムノイズ/モノクロ/レトロ/セピア
モザイク/ポスタライズ/⽔彩画/8bit
4.⾃作3Dモデルインポート機能
作った都市の風景に⾃作のGLB/GLTFモデルを追加できる機能を実装しました。
モデルのサイズ変更ができるので、下のGIF画像のように巨大化させて東京タワーの横に並べることができます。
また事前にアニメーションをつけておくと、3Dモデルが都市の中で動き出します。
5.オリジナルPLATEAU画像/動画作成機能
都市モデル、空、エフェクト、3Dモデルを組み合わせて作った都市の光景を画像ファイル、360度画像ファイル、動画として書き出すことができます。
ユーザーは自分だけのデジタルツイン素材をパソコンの壁紙、広告のチラシ、ポストカード、小説の挿絵、発表スライドの素材、Youtubeの動画素材、ゲームの背景素材、VRSNSやメタバースの空間の背景...etcとして利用することが可能です。
デモ映像
こうして1か月で「PLATEAU Sky Printing」は作り上げられました。
ただやはり期間が一か月ということもあり、提出用の資料作成は締め切り日当日である11月30日までかかり、滑り込みで提出しました。。。
その後、12月の一次選考で「PLATEAU Sky Printing」のデモ映像を見せながら審査員の方々にコンセプト、機能の説明を行いました。
実際にその時に使ったデモ映像は下記になります。
結果
結果として最終選考は進むことができなかったのですが、審査員の方々に高く評価され今後さらなる発展を期待する作品として、奨励賞を受賞しました。
審査員の方々から
・誰でも簡単にデジタルツインを活用できるというコンセプトが素晴らしい。
・簡易なUI/UXによって誰でも使えるシステムとなっていることも高評価。
とのコメントをいただきました。
メタバースチームとしても初のコンテスト参加で奨励賞といえども初の受賞となるため、チームみんなで喜び、かつ社外でも通じる企画力と開発力をもっているのだとあらためて自信を持つことができました。
PLATEAU AWARD 2023の最終審査会は2024年2月24日に開催され、小関 健太郎さんが開発したPLATEAUの3D都市モデルをPythonで扱うためのライブラリとコーディング環境である「PlateauKit + PlateauLab」がグランプリを受賞しました。
私も現地で最終審査会を見学していたのですが、思いもよらぬアイデアや高い技術力を見ることができて勉強になり、素晴らしい技術が出てくるたびに会場が大盛り上がりしていたのでとても楽しかったです。
最終審査会の様子はこちらのアーカイブから見られるようです。
おわりに
今回入社2か月というやっと会社に慣れ始めてきたタイミングでのコンテスト参加でしたが、企画のアイデア出しや作業の調整をしてくれた上長や、企画・開発・発表資料作成を手伝ってくれたチームメンバーのおかげで締め切り前の作品完成、奨励賞の受賞をすることができました。
新しい何かにチャレンジするのを温かく見守りフォローしてくれる良い環境だと感じ、改めて転職してきてよかったなと思います。
今後もメタバースチームの技術向上やビジネス検討を目的としてこのようなハッカソンやゲームジャムなどのコンテストに参加していきたいです。
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました!
また今後記事を書くことがあれば読んでいただけると嬉しいです。
私が所属しているTOPPANデジタル株式会社 ICT開発センターDXソリューション開発部ではメタバースやXRや3Dコンテンツを含め、今後新プロダクトの開発に注力していきます。もしメタバースやXRコンテンツの開発をしてみたい!という方がいればぜひこちらの採用ページもご覧ください。