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AIでドリフトを自動検知する実証実験をはじめました - TOPPANデジタル(株) ICT KŌBŌ® URUMA

ハイサイ!ICT KŌBŌ®︎ URUMAです。この度、AIとIoTを活用してドリフト走行を自動で検知する実証実験を開始しました。

プレスリリースはこちらをご覧ください。

本記事では、背景や技術的な要素を詳しくご紹介しますので、最後までお付き合いください!

背景

ドリフトについて

さて、みなさんは「ドリフト」と聞いてどのような光景を思い浮かべますか?

ドリフト走行とは車を意図的に横滑りさせてコントロールする走行技術のことであり、ステアリングのみに頼らず、アクセル、ブレーキ、サイドブレーキ、クラッチなどの積極的な使用により、スライド状態を維持したまま進行方向を調整する複合的で高度な操作が求められる。

「ドリフト走行」(2023年12月18日(月)10:05 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。 

そうですよね!モータースポーツで使われるテクニックとして有名ですよね。私がサーキットでプロのドリフト走行を見たときは、迫力ある動きとサウンドに感動しました。しかしこれは熟練者の技術をふさわしい場所で見たからこその印象です。

もしも誰かがあなたの家の近くでドリフト走行をしていたらどうでしょうか。人の心を動かすサウンドは一気に騒音へと変わります。また、公道で許可なく行われているため人を巻き込む事故に繋がりかねません。

うるま市 中城湾港新港地区でのドリフト走行

私たちの拠点がある中城湾港新港地区は綺麗に舗装された直線道路が多く、信号機の数もそこまで多くはありません。こうした条件からか、エリアのいたるところで”無許可での危険な”ドリフト走行が行われています。

中城湾港新港地区にある道路
路面には無数のタイヤ痕があります

その都度対策は取られてきていますが、コストや人員の制限で対策を継続的に続けられないこともあったそうです。

うるま市とモータースポーツ

一方で、うるま市ではモータースポーツを積極的に誘致しており、2024年にも多数のイベント開催が予定されています!

これらの活動を今後さらに盛り上げていくにあたって、住民の近くで行われる暴走行為はモータースポーツ全体の評判を落とすことにも繋がりかねません。

私たちはこのような現状を知り、デジタルの力でこれらを抑制する方法がないかを模索しはじめました。こうして始まったのがAI騒音自動検知システムの開発です。

システムの概要・特徴

AI騒音自動検知システムの概要は以下の通りです。

システムの概要

AIを搭載したIoTデバイスでドリフト音を検知します。そのデータをリアルタイムでクラウド上に反映することでブラウザのダッシュボードから確認できるようにします。

通常の防犯カメラによる監視とは異なり実際にドリフトが発生したタイミングでデータを蓄積しているため、録画のチェックや分析作業をより簡単にこなせるようになります。また、発生日時や曜日などの傾向を分析することにも繋がるでしょう。

次に、より詳細なシステムの特徴をお話します。

システムの特徴

まずはこの取り組みの肝であるドリフト検知AIについてです。
実際のドリフト音を教師データとしてAIモデルを構築するところからはじめました。

普通自動車やトラック、バイク、飛行機などが発する音を誤検知してしまわないように、音量や特定の周波数帯など様々な特徴に目をむけて精度向上を目指しました。

また、デバイスには省電力なマイコンボードを使用しています。外部電源が取れない環境への機器設置を可能にし、連続稼働時間を伸ばしています。

設置されているデバイス

開発の様子

このプロジェクトの開発メンバーにも、話を聞いてみました。

Q:今回、技術的に意識したことはありますか?

松村:クラウドサービスを有効活用したことです。社内ではAWSのサンドボックス環境が払い出されているため、技術的な検証が非常にやりやすいと思います。お陰で本番環境への適用も難なくこなすことができました。インフラ周りはクラウドサービスを活用して構築することで、ハードやAIなどに注力することができたと思います。

饒平名:筐体についてですが、必要なパーツの一部を3Dプリンターで自作しています。マイコンやマイクを取り付けるために必要となるパーツがありますが、それに見合う物を探したり製作委託すると、その分時間とコストがかかります。3Dプリンターの活用は、設置・改修のサイクルをより効率的に回すことに繋がっているかと思います!

3Dプリンターをメンテナンスする饒平名さん

Q:苦労された点をお聞かせください

松村:まず、AIモデルってどうやって作るの?という状態からの取り組み開始でした。
有識者の方からノウハウを一から叩き込んでいただき、それなりに扱えるようになったものの、トライ&エラーの連続でした。ひと言でドリフトと言っても、様々な音(エンジン音やマフラー、タイヤの滑る音など)があることが分かり、密閉した会議室で、現地で録音した音声データを爆音で鳴らしながら教師データを収集しました。総合的に判断してドリフトだと言える周波数の特徴を検討する必要があった事や、音量や音質といった多方面からのアプローチで特徴を判定できるようになるまで、かなりの期間を要しました。

真剣な表情でPCと向き合う松村さん

饒平名:取り組みの周知による抑止効果を狙ってプレスリリースを出すことになり、必要となったのが特許出願でした。 特許には新規性という要件があって、公に知られてしまうとその要件を欠いてしまいます...…
社内知財部のスタッフも非常に協力的でしたが、こちらも他社先行技術や特許原稿案のチェックを迅速に対応するように心がけて推進しておりました。
結果的に、プレスリリースでは「特許出願中です」の文言を付けることが出来たので、嬉しかったです。

Q:最後に一言ずつコメントをお願いします!

松村:うるま市は、モータースポーツを積極的に誘致し、地域活性化に向けた取り組みを行っています。しかしその半面、違法とされている公道での暴走行為やドリフト行為が無くならないというのも実情です。この取り組みを通して、事故や治安の悪化に繋がる危険行為を減らしていくことで、地域のイメージ向上や活性化に繋がればと思います。

饒平名:この技術をもとに、バイク暴走行為や不法投棄など、他の地域課題への応用が出来ればと思います。また、この実証実験をきっかけに様々な自治体・企業の方と関係を深めることができました。こうした活動を続けることで地域の魅力や課題の探索に繋げられれば良いなと考えています。

おわりに

最後までご覧いただきありがとうございました。
実証実験から得た結果を日々分析、検討して次なる活動に繋げていきます。

今後もICT KŌBŌ® URUMAからみなさまに良いニュースをお届けできるよう邁進してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします!


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